竹の秋と秋の麦
天を目指して伸びていく竹。そのまっすぐ立っている様子や美しい緑色には、つい目を奪われてしまいます。特に新緑の頃は、いっそうまぶしいその姿。しかし実は、竹にとっての新緑の頃…つまり「春」は、春夏秋冬で言うと「秋」に当たるって知っていますか?
春から初夏は、竹の子を育てるのに栄養をとられる、いわば「実りの季節」でもあります。竹の葉は1年で生え変わりますが、5~6月に黄色く色づいて落葉します。竹の子が大きくなった後なので、まるで子どもを育てた親の竹が疲れて枯れていくようにも見えますが、実際は、新芽に日光を当てるために古い葉を落としているのだと考えられています。こういったことから、実際の季節は春であるにもかかわらず、竹にとっては「秋」のイメージとなるのです。そして、ほかの木々が落葉する秋は「竹の春」となって、すくすくと勢いづいていきます。
また、小麦・大麦などの麦類は初夏を中心とする季節(5月~7月)に収穫期を迎え、畑いっぱいに穂が実ります。そのため、この時期を「麦の秋」と呼ぶようになりました。麦の仲間は、米のように夏に育つのではなく、秋に種をまかれたあと、冬の間に育って、初夏に実を結ぶのであります。辺りの草木がみずみずしい緑色となっている初夏に、麦畑だけが黄金色になっているのを見ると、なにか神々しさのようなものを感じさせられます。
ゆえに、俳句の世界では、「竹の秋」は春の季語であり、「秋の麦」は夏の季語になります。子どもを育てた親竹が、新芽に日光を当てるために古い葉を落としている光景。なんだか切ないですね!また、我が子どもたちには、麦のように初夏には、きれいな実を結んで欲しいものです....。